90歳の祖母へプレゼントしたヘアブラシ

昨年離れて暮らす祖母が、90歳の誕生日を迎えました。膝はちょっと悪くしていますが、いつも元気溌剌な祖母です。そんな祖母に「何か欲しいものある?」と聞いても、「本当に何も欲しいものはないから、お金使わないで。」と言ってプレゼントをもらうのを拒みます。
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いつもそうなのです。毎年お誕生日と敬老の日には何かちょっとしたものでも贈ろうと思うのですが、ここ10年くらいは本当に物は欲しくないようで、以前あげたストールも、京都で見つけた素敵な和風のバッグも使った形跡はありません。お茶やお菓子だと「お友達が来た時に出すようにするね」と喜んでくれます。祖母のところには近所に住むお友達が毎日のように遊びに来るので、実際お茶やお菓子は役立っているようです。そういうこともあり、最近はずっと何かを贈る時は食べ物系ばかりになっていました。
しかし昨年の誕生日は90歳という節目の歳だし、何か形のあるものをあげたいなと思って前述のように祖母に尋ねたのですが、結果はいつもと同じ。祖母は何も欲しくないし、孫にお金を使わせたくない。私ももう大人になって随分たつのですけどね。
仕方が無いので私なりに考えて、日本橋の江戸屋のヘアブラシを贈りました。特級黒豚毛というものにしました。祖母は90歳ですが、とても綺麗で豊かな白髪です。毎日ブラッシングしているのを知っていました。使っているヘアブラシは豚毛のものだと思いますが、もう随分長い間使っていることに気づいたからです。
お誕生日に祖母にヘアブラシを持っていくと、「ありがとう、でももう物はいらないからね、お金使わないでね。」といつも通りです。また使わないままになってしまうかもしれないなと思いながら帰りました。
3ヶ月程経って今度はお菓子を持って再び祖母に会いに行くと、三面鏡の上にヘアブラシが置いてあるではありませんか。私は内心、やったー!使ってくれてる!と大喜びです。持って行ったお菓子を一緒に食べながら、祖母は私に「あの櫛(祖母はブラシのことも櫛と言います)で髪をとかすととても気持ちいいよ、とっても良いものだね。ありがとうね。でもこれで最後ね、もう何もいらないからね。」と言いました。私は「わかった、また美味しいお菓子を見つけたら持ってくるから一緒に食べようね。」と答えました。
恐らくヘアブラシは、祖母の心が動くほとんど唯一のものだったのかなと思いました。髪はやはり女の命なのだなと思った次第です。